ゼップバウンドとは?
肥満治療薬「ゼップバウンド」は、米国製薬大手イーライリリーが開発した注射薬で、食欲を抑え体重減少を促進する新しいGLP-1/GIP受容体作動薬です。
この薬は、BMIが30以上、またはBMIが27以上で高血圧や脂質異常症などの肥満関連疾患を持つ患者を対象としています。
ゼップバウンドの特徴は、従来のGLP-1受容体作動薬に比べ、食欲抑制と体重減少効果が高い点にあります。
2023年にはアメリカで肥満症治療薬として承認され、注目を集めました。
また、2型糖尿病治療薬「マンジャロ」と同一成分でありながら、肥満治療専用としての適応を受けています。
日本では肥満症治療薬として約30年ぶりの新薬承認となり、治療選択肢の幅を広げる画期的な薬剤です。
一方で、美容目的の不正使用が原因で供給不足が発生しており、適切な使用が求められます。
ゼップバウンドの仕組みと効果
ゼップバウンドの作用機序は、GLP-1とGIPという2種類のホルモンに基づいています。
GLP-1は胃の動きを抑え、満腹中枢を刺激することで食欲を減退させます。
一方、GIPは脂肪燃焼を促す「レプチン」の生成をサポートし、代謝を活性化します。
このダブル作用が、従来の治療薬と比較してより高い体重減少効果をもたらす理由です。
臨床試験では、72週間で体重が20%以上減少するという驚異的な効果が確認されました。
特に、15mgのチルゼパチドを週1回投与したグループでは、平均20.9%の減少が報告され、治療の可能性が実証されています。
ゼップバウンドの投与方法
ゼップバウンドは週1回の皮下注射で使用され、最初は2.5mgから開始します。
投与量は4週間ごとに増量し、効果や耐性を見ながら最適な維持量(5mg、10mg、15mg)に調整されます。
使用時には、必ず決められた曜日に注射を行い、忘れた場合でも状況に応じた対応が必要です。
例えば、72時間以上次回投与まで時間がある場合はすぐに投与し、次回は通常通りの曜日に戻します。
これにより、安定した効果を維持できます。
ゼップバウンドの副作用とリスク
ゼップバウンドの副作用には、消化器症状(嘔気、便秘、下痢)や稀な膵炎のリスクがあります。
これらの症状は通常、身体が慣れることで軽減しますが、強い腹痛や日常生活に支障をきたす場合は医師に相談してください。
また、動物実験で甲状腺腫瘍の発生率が増加した報告があるため、該当する疾患の既往歴がある方への処方は禁忌です。
ゼップバウンドとマンジャロの違いは?
ゼップバウンドとマンジャロは、基本的に同一の成分 チルゼパチド を使用した薬剤であり、その主成分と作用機序において共通点があります。
しかし、以下の点で違いがあります。
1. 適応疾患
⇒ゼップバウンドの場合
肥満症治療薬として開発・承認されています。
適応対象は、BMI30以上の方、またはBMI27以上で肥満関連疾患(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病など)を有する方。
⇒マンジャロの場合
2型糖尿病治療薬として承認されています。
血糖値コントロールを目的とした薬であり、肥満症に特化していませんが、体重減少効果が副次的に報告されています。
2. 商品名と位置づけ
◎ゼップバウンド
肥満症治療の新ブランドとして、米国や他国で新たに承認されました。
肥満患者を対象にした市場への参入を明確に意識しています。
◎マンジャロの場合
主に2型糖尿病治療市場で認知されています。
体重減少効果はありますが、肥満症専用薬としての適応はありません。
3. 使用目的
◎ゼップバウンドの場合
肥満症治療を目的に特化した使用。
食欲抑制や体重減少を重視した投与指導が行われます。
◎マンジャロの場合
糖尿病患者の血糖値コントロールを主目的とし、併せて体重減少効果も得られる場合があります。
4. 市場での利用状況
◎ゼップバウンドの場合
肥満治療薬市場に新規参入。
日本国内でも肥満症治療薬として承認を受けたことで注目されています。
◎マンジャロの場合
すでに広く糖尿病治療薬として使用されています。
肥満症への応用はオフラベルで行われる場合もありますが、公式には肥満症適応ではありません。
5. 医療機関での使用ガイドライン
◎ゼップバウンドの場合
肥満症診断の条件を満たす場合のみ処方。
肥満関連の健康障害のリスク軽減に特化しています。
◎マンジャロの場合
2型糖尿病患者に対する血糖値コントロールの一環として処方。
肥満症がなくても糖尿病患者に広く使用されています。
ゼップバウントとマンジャロのまとめ
ゼップバウンドとマンジャロの主成分や作用機序は同じですが、適応疾患や市場ターゲット、使用目的が異なる点が大きな違いです。
肥満治療薬として特化しているゼップバウンドは、肥満関連疾患の改善を目指し、治療の選択肢を広げています。
一方、マンジャロは糖尿病治療薬としての役割が中心で、肥満治療はあくまで副次的な効果に留まります。
ゼップバウンドの未来は?
ゼップバウンドは、肥満症治療の新たな選択肢として、医療現場や患者から期待されています。
特に、日本国内では肥満症患者が増加傾向にあり、この薬の普及が社会全体の健康改善に寄与する可能性があります。
一方で、美容目的の不適切な使用や不正な流通による品薄問題が懸念されています。
医療関係者と患者が正しい情報を共有し、適切な使用を促進することが、ゼップバウンドの長期的な成功に不可欠です。
今後の課題としては、供給体制の強化と、不正使用防止に向けた対策が挙げられます。これらの課題を克服し、ゼップバウンドがより多くの患者に貢献する日が期待されます。